2025年、アメリカでは長らく維持されてきた デミニス制度(800ドル以下の小口輸入品を関税免除する仕組み) が撤廃されました。
これにより、わずかな商品でもすべて関税の対象となり、特に低価格帯の商品を扱う事業者にとっては 販売コストが大幅に上昇。
これまで気軽に参入できていたアメリカ市場は、一転して「高い参入障壁のある市場」へと変化しました。
小口輸入を武器にスピーディーに展開していたEC事業者は価格競争力を失い、多くが販路の再構築を迫られています。
つまり、アメリカ一極集中型の越境EC戦略は、すでにリスクが高い時代に突入したのです。
👉 こうした中で注目を浴びているのが Shopee(ショッピー)。
アメリカの高関税に左右されず、成長を続ける 東南アジア市場に直接アクセスできるECモール であり、人口増加と経済成長が見込まれる地域にダイレクトに販路を広げることが可能です。
「アメリカでは売りにくい、でも世界にはまだ伸びる市場がある」──Shopeeは、まさにそのニーズに応える新たな越境ECの選択肢として注目されています。
Shopeeとは?

Shopee(ショッピー)は、2015年にシンガポールで設立されたECプラットフォームで、東南アジアおよび台湾を中心に急成長を遂げています。
2024年時点でアプリの累計ダウンロード数は2億件を超え、若年層を中心に圧倒的な利用者を獲得しており、「東南アジアのAmazon」とも呼ばれる存在です。
日本からは以下の6か国に出店可能です。
- シンガポール
- 台湾
- マレーシア
- タイ
- フィリピン
- ベトナム(※条件付きで2店舗目以降)
日本法人「Shopee Japan」も設立されており、日本語によるサポートも受けられるため、越境EC初心者にも挑戦しやすいのが特徴です。
Shopeeの出店方法

Shopeeで越境ECを始めるための出店ステップは、大きく分けて 5段階 です。
1. アカウント申請
- Shopee公式サイトの「セラー登録」から申請を行います。
- 必要情報は以下の通り:
- 個人/法人の選択
- 法人番号(法人の場合)
- 氏名または会社名
- 携帯電話番号
- メールアドレス
- 提出後、登録メールアドレス宛に 確認リンクや追加フォーム が届きます。
🔹 ポイント:
- 日本から出店できるのは シンガポール、台湾、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム(条件付き)。
- 初めての出店ではベトナムは選択できず、2店舗目以降で開設可能です。
2. 詳細フォーム提出
申請後に届く「審査用フォーム」に、事業の詳細情報を入力します。
- 事業形態:個人事業主 or 法人
- 出店希望マーケット(国)
- 商品カテゴリー(例:ファッション、雑貨、美容品など)
- 税務関連情報(国によって必須項目あり)
Shopeeが審査を行い、数日以内に承認結果が通知されます。
🔹 ポイント:
- 国や商品カテゴリーによっては追加書類(登記簿、輸入許可証など)が必要。
- 出品禁止商品に当たらないかを事前に確認することが大切です。
3. 決済口座(Payoneer)開設
Shopeeの売上金は、越境EC用の国際決済サービス Payoneer(ペイオニア) を通じて受け取ります。
- アカウント作成後、Payoneer口座をShopeeのセラーセンターに紐付け。
- 登録時に本人確認書類(パスポートや運転免許証など)や銀行口座情報が必要です。
- 審査には数日かかるため、早めに申請しておくとスムーズです。
🔹 注意点:
- Payoneerの登録が完了しないと、商品販売を開始できません。
- Shopeeは2025年以降、ベトナム市場での税金(VATなど)を自動徴収・納税する仕組みを導入しており、正確な事業者情報登録が必須になっています。
4. 商品登録
審査に通過し、Payoneer口座の設定が完了したら商品を登録します。
- 商品タイトル(現地ユーザーに分かりやすい表現が重要)
- 商品説明文(英語または現地言語推奨。翻訳ツール+ネイティブチェックが理想)
- 価格(現地通貨で設定)
- 画像(高画質・多角度の写真を推奨)
- 在庫数・発送日数の設定
🔹 重要ルール:
- アカウント開設から30日以内に 5商品以上 の出品が必須。未達成だとアカウントが停止される可能性あり。
- 商品説明には「発送にかかる日数」「返品ポリシー」も記載しておくと信頼性が向上します。
5. 物流設定
Shopeeの物流サービス SLS(Shopee Logistics Service) を利用することで、越境配送が簡単になります。
- 出品者は日本国内のShopee指定倉庫に商品を送るだけ。
- 倉庫から各国の購入者に配送され、関税処理や伝票作成もShopee側が代行。
- 配送ステータスもShopeeシステムで自動反映されるため、購入者への通知もスムーズ。
🔹 メリット:
- 英語伝票や関税計算の手間が不要
- 配送リードタイムが安定
- 現地配送費が割安になる場合もある
Shopeeのメリット

低コストで参入可能
- 出店料・月額利用料はゼロ
他の大手モール(Amazonや楽天など)と異なり、固定費がかからないため初期リスクが非常に小さいです。 - 販売手数料が安価
商品が売れたときに発生する手数料はおおむね 5〜7%(決済手数料込み)。- Amazon:8〜15%
- eBay:12〜15%
と比べても、Shopeeは参入コストを抑えられます。
👉 結論:小規模事業者やテストマーケティング目的の企業に最適。
成長市場へのアクセス
- 東南アジアは人口増加中
2050年までに多くの国で人口増加が見込まれており、消費市場が拡大しています。 - EC利用率の急拡大
特に若年層はスマホ経由での購買が多く、SNSとの連動性も高いことからオンライン購入が日常化しています。 - 日本製品への高評価
「Made in Japan」は高品質・信頼の象徴。美容品、家電、生活雑貨などは現地で根強い人気があります。
👉 結論:日本国内では売れにくい商品でも、東南アジアでは需要が高まりヒットする可能性あり。
物流支援が充実
- Shopee Logistics Service(SLS) を利用することで、
- 出品者は商品を日本国内の提携倉庫へ発送
- 倉庫スタッフが現地配送を代行
- 関税処理や伝票記入などの煩雑な業務を省略でき、配送ステータスも自動で反映されます。
👉 結論:輸出初心者でもスムーズに海外配送ができ、顧客満足度を高めやすい。
日本語サポート
- 2020年に Shopee Japan が設立され、日本語対応のカスタマーサポートを提供。
- 出店サポートやトラブル対応も日本語で行えるため、英語が苦手でも安心です。
- 売れ筋商品の分析やプロモーション支援も利用可能。
👉 結論:越境EC未経験の事業者にとって大きな安心材料。
Shopeeのデメリット

国ごとにアカウント管理が必要
- 出店はマーケットごとにアカウントを分ける必要があります。
- 在庫・価格調整・顧客対応も国単位で行うため、複数国で展開すると管理の手間が増加。
👉 課題:一元管理が難しく、効率化の仕組みが必要。
配送コストとリードタイム
- 越境配送には 通常1〜2週間 かかることが多く、国内配送に比べて遅延リスクがあります。
- 配送料は現地配送より高額になる傾向があり、価格競争力に影響する可能性があります。
👉 課題:送料無料戦略や在庫の現地保管など、コスト最適化の工夫が必要。
規制・禁止商品の存在
- 医薬品、タバコ、アルコール、偽造品などは出品禁止。
- 国ごとに規制が異なり、違反するとアカウント停止や罰金のリスクがあります。
👉 課題:事前に各国の規制を調査し、禁止品を扱わない体制が不可欠。
税務対応の強化
- 2025年からベトナムでは、Shopeeが売り手に代わって VAT(付加価値税)の徴収・申告・納税 を行う制度が開始。
- 売り手は正しい法人情報や税コードを登録する必要があり、不備があると取引できません。
- 他国でも税制強化が進む見込み。
👉 課題:最新の税務ルールを把握し、適切に対応する体制が必要。
まとめ
Shopeeは、東南アジア最大級のECモールとして急成長を続けており、日本の事業者にとって 新たな販路開拓のチャンス となるプラットフォームです。
低コストで始められ、物流やサポートも整っている一方で、配送コストや国ごとの規制、アカウント管理の煩雑さなどの課題もあります。
これから越境ECを始めたい方は、まずはシンガポールや台湾など比較的参入しやすい国からスタートし、実績を積みながら展開を広げるのがおすすめです。